【要旨】

株式会社東レリサーチセンター(所在地:東京都中央区日本橋本町一丁目 7番 2号、社長:真壁芳樹、以下、「TRC」)は、生きた細胞をできるだけ自然な状態のまま観察し、細胞全体の状態や動きから

主要指標 — KEY FIGURES

100万分の1メートル
100万分の 1メートル
10億分の1メートル
10億分の1メートル

内部の微細な構造までを一貫して調べることができる受託分析サービスを開始します。

本サービスでは、生きた細胞の状態や動きの変化をマイクロメートルレベル(マイクロメートルは

100万分の 1メートル)で観察した後に、同じ細胞の内部構造をナノメートルレベル(ナノメートルは10億分の1メートル)で詳しく調べることができる点を特長としています。 創薬研究における薬剤の作用評価や、メッセンジャーRNA(mRNA)(*1)医薬を細胞へ届ける脂質ナノ粒子(LNP)(*2)の細胞内での動きの解析、細胞外小胞(EV)(*3)の研究、再生医療分野での細胞品質評価などへの活用が期待されます。 TRC は本サービスを通じて、創薬、再生医療、バイオマテリアルにおける研究・技術開発を支援します。

【背景】

近年、創薬スクリーニングや再生医療分野では、薬剤の作用や細胞機能、細胞同士の接着や情報伝達を正しく理解するためには、生きた細胞本来の状態を維持した観察が重要なので、細胞をできるだけ自然な状態のまま観察・評価したいというニーズが高まっています。しかし、従来の観察手法では、固定や染色、蛍光標識(観察したい分子に蛍光色素を付けて可視化する手法)などの前処理を必要とする場合が多く、それらの処理によって細胞の形や働きが変化する可能性がありました。

また、細胞を正しく評価するためには、細胞全体の形から細胞内部の極めて小さな構造まで観察する必要があります。光学顕微鏡は生きた細胞をそのまま観察することに適していますが、細胞内部の非常に小さな構造を詳しく見ることには限界があります。一方、電子顕微鏡は非常に高い分解能を持つものの、試料を固定・乾燥する必要があり、生きた細胞をそのまま観察することは困難でした。

このような背景から、生きた細胞への影響を抑えながら、細胞全体の状態や動きと細胞内部の微細構造観察を組み合わせて評価できる分析手法が求められています。

【本サービスの主な特長】

1. 生きた細胞の状態や細胞内の動きをそのまま観察(マイクロメートルレベル)

透過型高分解能レーザー顕微鏡(*4)は、特殊な光学系により、蛍光標識などの前処理を行うことなく、生きた細胞を高コントラストで観察できます。細胞の数や形の変化、細胞同士の集まり方などを迅速に把握できるほか、非標識・液中のままミトコンドリアなど細胞内の動きをリアルタイムに観察できる点が特長です。薬剤投与による影響評価や培養状態の確認に活用できます(図1)。また、特殊な前処理や培養環境の変更を必要としないため、細胞本来の状態への影響を抑えた評価が可能です。

図 1.透過型高分解能レーザー顕微鏡による観察。培養皿内で生きた細胞をそのまま観察した例。細胞 内に細長いミトコンドリア(矢印)が確認できる。

2. 生きた細胞の内部構造を観察(ナノメートルレベル)

SE-ADM(*5)は、液体中の試料をそのまま観察できる技術です。電子線を試料に直接当てないため、生きた細胞を固定や染色せずに観察でき、ナノメートルレベルの微細な構造まで捉えることができます(図2)。また、細胞を構成する成分である炭素(C)、水素(H)、酸素(O)、窒素(N)などを高

いコントラストで観察できるため、細胞内の粒状構造や脂質を多く含む構造などを可視化できます。細胞膜の周辺や細胞内の微細な構造、細胞外小胞(EV)の観察への応用が期待されます。

なお、SE-ADM による生きた細胞の観察はこれまで一部の研究機関に限られてきた技術であり、これを受託分析サービスとして提供するのは世界的にも先駆的な取り組みです。

図2.SE-ADMによる生細胞内部の観察例。左は生細胞の観察像、中央はその拡大像であり、細胞内部 の微細な構造を液体中のまま観察できる。右は粒状構造の観察例で、脂肪滴と考えられる構造が高いコ ントラストで確認できる。

3. 細胞全体の観察から内部構造の観察までを一体化

本サービスでは、まずレーザー顕微鏡で細胞全体の状態や動きを観察し、その後、変化が見られた細胞や着目した領域を SE-ADMで詳しく観察します。細胞全体の様子の把握から内部構造の解析までを一連の流れで行えることが特長です。

これにより、

・薬剤投与前後の細胞変化の評価

・LNPやナノ粒子の細胞への影響評価

・EVの放出・取り込みに関する研究

・細胞内輸送や細胞間コミュニケーション機構の解析

などにおいて、効率的かつ多面的な評価が可能になります。

【想定される活用分野】

創薬研究

・薬剤投与後の細胞状態変化の評価

・薬を運ぶナノ粒子が細胞に取り込まれた際の変化の観察

再生医療

・幹細胞培養状態の評価

・培養プロセスのモニタリング

細胞生物学・ライフサイエンス研究

・細胞や細胞由来物質の観察

・細胞内部の微細構造の観察

バイオマテリアル分野

・エマルションやゲルの微細構造評価

・細胞への影響評価

【今後の展望】

TRC は本サービスを通じて、生きた細胞を対象とした観察技術の活用を拡大し、創薬、再生医療、

EV研究、バイオマテリアルなど幅広いライフサイエンス領域の研究・技術開発を支援してまいります。具体的には、薬剤応答評価や LNP・ナノ粒子の細胞内での動きの解析、EVの放出・取り込みの観察などへの適用を進め、細胞が物質をつくり、運び、放出する仕組みの解明に貢献します。さらに培養、培養・観察環境の拡充により、細胞が時間と共に変化する様子の観察へと適用範囲を広げると共に、他の分析技術との連携も進めながら、生命現象の理解を支える新たな分析ソリューションの提供を目指します。

【用語解説】

(*1)mRNA(メッセンジャーRNA:messenger RNA):細胞内でタンパク質を作るための設計図となる情報を運ぶ物質。近年では、ワクチンや医薬品への応用が進められている。

(*2)LNP(脂質ナノ粒子:Lipid Nanoparticle):脂質からできた非常に小さな粒子。mRNA などの核酸医薬を細胞へ届ける運び役として利用される。

(*3)EV(細胞外小胞:Extracellular Vesicle):細胞から放出される非常に小さな袋状の構造。タンパク質やRNAなどを運び、細胞同士の情報伝達に関わると考えられている。

(*4)透過型高分解能レーザー顕微鏡:レーザー光を用いて、生きた細胞を染色せずに観察できる顕微

鏡。細胞の形や内部構造を高いコントラストで観察でき、細胞内の動きをリアルタイムで捉えることが

できる。

(*5)SE-ADM(走査電子誘電率顕微鏡:Scanning Electron-Assisted Dielectric Microscopy)

液体中の試料をそのまま観察できる電子顕微鏡技術。試料に電子線を直接照射しないため、生きた細胞

を固定や染色することなく観察でき、細胞内部の微細な構造をナノメートルレベルで可視化できる。従

来の電子顕微鏡では難しかった液体中の生細胞観察が可能である。

図3.SE-ADM細胞観察の概要

培養皿内のシリコンフレームには観察用の窓(SiN 膜窓)が設けられ、その窓を覆う薄い SiN 膜(窒化

ケイ素膜)の上で細胞を培養する。SiN 膜の外側には重金属層(金属膜)を成膜してあり、この金属膜

側から電子線を照射し、膜下の検出端子で信号を取得する。

FACT BOX ・ 要点整理

  • 出典:PR TIMES
  • 分類:press_release
  • 関連組織:株式会社東レリサーチセンター / TRC